毎月の営業会議に向けて、売上表から地域別の変化を拾い、失注理由を整理し、来月の確認事項をまとめる。たとえば、この準備をAIに手伝ってもらうなら、売上表に加えて、社内で使う「売上」の定義や、会議で必ず確かめる項目も伝えたいところです。毎回説明を書き直す代わりに、繰り返し使う手順として残せれば、担当者が替わるときにも引き継ぎやすくなると考えられます。

その受け皿になるのがAgent Skillsです。公式サイトによると、指示を受けて作業を進めるAIエージェントに渡す指示、スクリプト、資料を、フォルダーにまとめるオープンな形式です。Anthropicが始めた形式で、複数の対応製品で利用できると説明されています。

仕事に置き換えるなら、AIが必要なときに開く手順書に近いものです。「手順書」は役割を表す比喩で、実際にはSKILL.mdというファイルに名前、説明、手順を書き、必要に応じて補助ファイルを添えます。

手順をまとめる:資料の読み方や形式を保存。必要なときに読む:仕事に合う手順を選ぶ。会議の資料へ:決めた形で整理する。手順書に加え、入力資料と結果の確認も必要

売上表と一緒に、集計のルールと完成見本を用意する

営業企画の担当者が月次会議の下書きを作る場面で、入力から出力までを考えてみます。以下は実際の導入事例ではなく、この形式を仕事に当てはめた例です。

入力するのは、当月と比較対象月の売上表、失注理由を記録した一覧です。これらの月ごとに変わるデータとは別に、会社が採用する売上の定義、地域の分け方、集計から除く項目、報告書の完成見本を用意します。繰り返し使う仕事のルールを、手順や補助資料としてまとめる設計です。

AIに行わせたい作業は、順序も含めて書きます。まず必要な列がそろっているかを確かめ、次に同じ地域区分で集計し、変化の大きい項目を取り出す、といった流れです。失注理由を整理するなら、表現が違っても同じ理由としてまとめる条件や、判断できない記録を保留する扱いも残すとよいでしょう。

出力の見本には、地域別の増減、記録から読み取れる失注理由、次の会議で確かめる事項を入れます。たとえば、売上が減った地域と失注の多い地域が重なっても、それだけで原因を決めず、確認事項として出す手順が考えられます。担当者は下書きを基に案件の事情を確かめ、会議で何を議論するかを判断します。

ここで目指すのは、同じ確認手順を引き継ぎやすくすることです。手順をそろえても、AIが必ず同じ結論を出すと保証されるわけではありません。

AIは概要を知り、必要な場面で詳しい手順を読む

公式サイトの説明では、対応するエージェントは最初にスキルの概要を知り、必要な場面で詳しい手順や資料を読みます。概要から用途を把握し、作業に必要な詳細へ進む構成です。

営業会議の例なら、SKILL.mdに用途と作業手順を書き、完成見本を補助ファイルとして添える構成が考えられます。用途には月次の売上と失注理由を確認して会議用の下書きを作ることを、手順には集計の順序や報告の形式を記します。完成見本があれば、文章の指示だけでは伝えにくい項目の並びや、どの程度詳しく説明してほしいかも示せます。

必要なら、処理を実行するためのプログラムである「スクリプト」も添えられます。ただし、売上表を読めるか、スクリプトを実行できるか、社内の保存場所へ接続できるかは、試す製品と環境で確かめる必要があります。形式に沿ってファイルを用意するだけで、営業会議の準備が一通り実行できるとは判断できません。

業務ルールをファイルに残し、変更に合わせて直す

Agent Skillsは、単にモデルを追加学習する技術ではないと説明されています。指示や資料を用意し、対応するエージェントが必要に応じて読む形式です。

この仕組みを使えば、毎回の依頼文に重ねていた説明のうち、繰り返す部分をまとめて管理する運用が考えられます。たとえば地域区分が変わったときは、手順や補助資料を見直します。AIへどのような指示を渡しているかを担当者がファイルで確認できるため、引き継ぐ内容も具体的になります。

一方、古い定義を残せば、そのルールに沿った下書きが出る可能性があります。誰が内容を確かめ、いつ見直すかも決めておきたいところです。売上の定義を更新した際には、完成見本にも古い集計方法が残っていないかを確かめる、といった運用が考えられます。

過去の資料で、集計と確認事項が合っているかを試す

公式サイトは複数の対応製品で利用できるとしていますが、製品間で結果や使い勝手が同じだとまでは判断できません。この形式の説明だけから、会議準備の時間や集計の正確さがどれだけ改善するかを数値で示すこともできません。

導入を検討するなら、内容を把握している過去の月の資料を使い、従来の手作業と照らし合わせる方法が考えられます。文章の読みやすさに加えて、集計対象を正しく選べたか、地域区分を守れたか、根拠のない原因を付け足していないかを見ます。判断できない箇所を、担当者への確認事項として残せたかも確かめたい点です。

手順をまとめる前と後で、担当者が修正する箇所や確認にかかる時間を比べれば、自分たちの仕事に役立つかを判断しやすくなります。利用料金や実行時間も、採用する製品と実際の作業条件に沿って確認します。読みやすい下書きができても、数字の確認に手間が増えるなら、手順や任せる範囲を見直す余地があります。

再利用する手順と、その月の機密データを分ける

運用では、再利用する手順と、その月の売上や案件情報を分けて管理すると扱いやすいでしょう。オープンな形式であることは、自社のデータを公開する必要があるという意味ではありません。

たとえば、完成見本には架空の案件を使い、実際の売上表は社内で認められた保存場所から渡す設計が考えられます。手順を外部公開リポジトリ、つまりファイルを公開・共有する保管場所に置く場合も、機密データは混ぜないようにします。ファイルを分けるだけではアクセス管理は済まないため、利用する製品がどの資料を読めるかも確認します。

最初は地域別の集計と確認事項の下書きなど、手順と結果を照合しやすい範囲から試すとよいでしょう。AIへ渡す手順を言葉にする過程では、担当者の経験に埋もれていた判断条件も整理できる可能性があります。Agent Skillsに残した内容は、AIへの指示とともに、担当者同士が仕事の進め方を確かめる材料にもなり得ます。